裏切りの少年
相棒の指示の後、『A3』は標的に四方八方から攻撃を行った。
攻撃は地面に当たり、周囲に砂煙を覆った。


『攻撃止め』


相棒が指示を出すと、『A2』は攻撃を止めた。
今回の任務は敵を倒すことでない。
標的を捕えることだ。
そのため、敵の姿が見えなければ意味が無い。

攻撃を止めると、徐々に視界が晴れて行った。
次第に標的の姿も見えたが、『A1-3』の姿が見えない。
俺は『A1-3』を探すと、標的の右手に何かを掴んでいるように見えた。
俺は目を凝らして見ると、『A1-3』の残骸を持っていた。

『A1-3』を盾にしたのか………
いいや。
それはない。

『B2M2』を直撃で死なない奴だ。
『A1-3』を捕まえて、攻撃が止むのを待ったのだろう。




標的は辺りを見渡した。


『攻撃再開』

相棒が『A2』に指示を出した。

『A2』は指示通りに攻撃を再開するが………


「あああぁ―――」


突然、標的が叫び出した。

その瞬間、俺の身体は吹き飛ばされた。
俺は手に持った拘束具である程度、吹き飛ばされただけで助かったが、この重い拘束具が無ければ、どうなっていただろうか。
もしかしたら、木に衝突して気を失っていたかもしれない。

これも標的の能力なのか………
だとすると、『空間系』か………
それはありえない。
まさか………
『多才能力者』か………




俺は数日前に報道された『多才能力者』のニュースを浮かべた。
確か、8人だったか。
もしかしたら、『W』独自でも研究は行っていたのかもしれない。

だが、その考えなど関係ない。
俺は拘束具を標的に付ければいい。
もともと、バケモノの能力など不明なのだ。
今さら、標的の能力を分析し直せば、その間に部隊は全滅だ。
俺は与えられた仕事をタイミングよくこなせばいい。
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