裏切りの少年
『攻撃を再開しろ』


相棒が吹き飛ばされた『A2』に再び指示を出した。
最初の攻撃とは違い、『A2』に連携のない攻撃を行った。
標的は攻撃を避ける様子もなく、辺りを見渡している。
まるで狙いを定めているようだ。


やがて、一点を見つめた。
次の瞬間、標的は凄まじい速さで、『A2』の一人に近づいた。


『やめろ………
来るな………』


通信機から『A2』の一人の叫び声が聞こえた。


『あああぁ………っ』


死んだのだろう。
叫び声は止んだ。


隊員の亡骸が、作戦ポイントの広場に放り投げられた。
それは無造作なものだった。
標的は広場に戻り、再び辺りを見渡した。


『攻撃再開。
『A3』はさっさと拘束具を取り付けろ』


相棒は『A2』の奴らに指示を出すとともに、俺にも指示を出した。
さっさと拘束具を付けろと言っているのだろう。
だが、俺はすぐには動かなかった。


俺と標的には距離間があった。
俺が初速度で移動できる範囲は最大30メートル。
それ以上の距離を移動すると、速度が落ちる。
俺は焦らずにタイミングを待った。


『A2』は攻撃を再開した。
同時に標的の動きも活発になった。
バケモノのエンジンが掛り出したようだ。
標的は攻撃する『A2』の場所をある程度、見つけたのだろう。


それ以降は見渡す様子もなく、次々と殺していった。
通信機からは『A2』の悲鳴声が止まない。
だが、俺は動かない。


やがて、俺の最も近くにいた『A2』に標的が近づいた。
標的は『A2』を見ているため、俺に背を向けている。


『チャンス』だ………


俺は拘束具を持ち上げ、『衝撃』能力を足に集中させ、一気に爆発させた。
その間は一秒にも満たない。
バケモノは俺に気づいていない。
俺は手錠の入り口を標的に向け、バケモノの腰の部分を当てた。
拘束具は大きな音を立てて、標的を捕えた。


「ホーク」


通信機など使う暇がなかった。
相棒は俺の声を聞き、状況を理解したのだろ。


辺りに爆発音が響いた。
『B2M2』を発射させたのだろう。


俺はバケモノから離れた。
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