裏切りの少年
俺の近くに居た『A2』の奴が『炎』能力で標的を攻撃した。
だが、標的は動かない。
『A2』は我を忘れたように『炎』を使った。
そのため、周りの木に火が移った。
このままでは、辺り周辺が火の海となるだろう。
だが、逃げるには絶好の機会だった。
俺は痙攣する足を叩き、木にすがりながら、立ち上がった。



作戦は失敗だ。
標的が『B2M2』の火力に耐えた時点で、この作戦は失敗を意味していた。
これ以上の戦闘は無意味だ。
俺はその場を離れることだけを考えた。



通信機からは『A2』の悲鳴声が鳴り響いた。
俺は通信機を地面に投げた。
もう、通信機など必要ないからだ。


『A2』の放った『炎』は徐々に浸食し始めた。
俺はすがる物が無くなったため、痙攣する足を引き摺りながら、ゆっくりとその場を離れようとした。
だが、そんなことが許されるはずがない。


俺は痙攣する足を見て、再び前を見た時、標的が目の前にいた。
標的の身体は返り血を浴びている。
まるで重傷を負った人間が立っているようだ。
標的は右足を一歩前に動かした。


一瞬、相棒がやられる光景を浮かべた。
こいつは俺に近づく………
そう思い、とっさに後ろに逸れたように準備した。
その予想は的中した。
標的は足を一歩動かしただけで俺のすぐ目の前まで近づいた。
そして、相棒同様に胸を殴ろうとした。
だが、俺が後ろに逸れたため、当たらなかった。


逸らした瞬間、バランスを崩した。
痙攣した足が邪魔をしたためだ。
俺は尻もちをついた。
俺が標的を見ると、奴は見下している。
標的は右手で拳を作り、殴る構えをした。


俺は目を閉じた。


死ぬことには慣れている。
だが、殴られて死ぬのは初めての経験だ。
俺も相棒のように死ぬのか………


そう思った瞬間………
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