裏切りの少年

43. 取材

―――29年前
俺は喫茶店にいた。
テーブルにはノート、ペン、PC、それにコーヒーの入ったコップが置かれている。
俺はここで人と会う約束をしていた。


現在、俺は『フリーライター』という職に就いている。
内容は『W』についてだ。本も執筆しているが、売れ行きは乏しい。
もともと、『W』に関する本は世界で執筆されていて、俺の書く内容など他の本にも書かれているような事ばかりである。


なぜ、俺が執筆活動をしているのか。
立て前では、世界に『W』という組織を伝えるためだと話している。
だが、本当は情報収集をするためだ。
本を執筆することで、『フリーライター』として活動をしていると思わせる。
そうすることで、情報提供者から情報を貰い、俺は金を払う。
これから会う人もインターネットで知り合った情報提供者だ


俺は時計を見た。
そろそろ、情報提供者が来るはずだが………
俺は辺りを見渡した。
まだ、来ていないようだ。


仕方なく、PCの電源を入れ、記事を書き出した。
タイトルは『国際テロ組織『W』とは………』
今までの歴史をまとめた内容だ。
まだ、執筆中である。


「あの～………」


俺はキーボードを叩き、執筆していると、女性に話しかけられた。


「んっ………」


俺は声のする方を見ると、若い女性だ。


「もしかして、柴田セイジさんですか」

「はい」


俺は答えた。


『柴田セイジ』は名前のペンネームだ。
執筆活動を行う際、本名を名乗ると、色々と厄介なものだ。
それに相棒と会うとき、障害が起こる可能性があると考えた。
そのため、ペンネームを使い、本を出している。


「遅くなりました。
初めまして。
私はアユミです」

「貴方が………」


俺は立ち上がった。


「来て頂きありがとうございます。
さぁ、どうぞ」


あれは向かい側にある椅子に座るように指示した。
アユミは何の疑いもなく、椅子に座った。