裏切りの少年
―――30分後
俺は太陽を見上げた。


「熱い………」


季節は夏。
日差しに当たりながら、執筆活動はさすがに厳しいと思えた。
俺は汗を拭きながら、PCのキーボードを叩いていた。


突然、ベルの鳴る音が辺りに響いた。
俺はPCから視界を公園の方へ向けた。
麦わら帽子をかぶった男は自転車に乗り、ベルを鳴らしながら、公園を回っている。
公園を一周すると、自転車を止めて、何かの準備をしている。
今まで遊んでいた子供達や世間話をしていた母親達が男を見ていた。


「まさかな………」


俺は動揺しながらも、男を見ていた。
男は自転車のカゴに入れた鞄から何かを取りだした。


「皆の大好きなアイスだよ～」


男はアイスで子供達を引き寄せている。
子供達はアイスが貰えると聞きつけ、男のもとへ向かって行った。
男はアイスを渡すと、自転車に積まれた箱を変形させた。
子供たちはアイスを食べながら、男を見ている。
男は準備が終わったらしく、作業を止めた。


「さて、それじゃあ始めようかな」


男は子供達を見渡した後、自転車に積まれた箱の一部を取った。
取れた場所から、『勇者の大冒険』と書かれた表紙が現れた。


「『勇者の大冒険』………拍手―――」


男は子供達に言った。
子供達はアイスを口にくわえながら、一生懸命拍手をしていた。
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