裏切りの少年
「………君達は『G』か」


辻本は俺の質問を無視して話し始めた。


「………」


俺は答えない。

たとえ、残り3分だけの命でも俺達『G』の情報は漏洩しない。

辻本は俺が殺害した護衛の死体に視線を移した。


「君達が殺した男の一人は守田という男でね。
彼には奥さんと息子さんが一人いるんだ」

「………」

「君達にとって『ただの人』なのかもしれない。
だが、他の人にとっては『大切な人』だ」

「もう一度聞く。お前は辻本ユウジか」


俺は辻本の冷静な姿に驚いていた。

これまで何度もこの時間を経験した。

ほとんどが我を忘れる。

だが、この男は何なんだ。

まるで死ぬことに何の恐れも感じない様子だ。


「私を殺すことは容易いだろう。
だが、その前に私の話を聞いてほしい」


俺は頷かなかった。

辻本は俺の質問を無視して話し始めた。


「君達はこの世界で何回死んだ」


俺は一瞬動揺した。

『この世界』とは………

それに『何回死んだ』………

辻本はどうしてそんなことを知っているんだ。

『G』しか知らないことだぞ。


「繰り返される時間。
君達は何を目的に行動しているんだ」

「………」

「君達が繰り返す時間を過ごすように、世界も繰り返す時間を過ごしている」

「何が言いたい」

俺は辻本の話に耳を貸した。

「『G』が思っているより、人々は賢い。
『世界のどこかがおかしい』
そう、感じている者が世界には存在している。
私はその人達を一ヵ所に集めた。
それが『W』だ」

「………『W』」

「君達の目的は私だ。
私を殺すのは勝手だ。
だが、『W』は潰さない方がいい」

「………俺に対する脅しか」

「それは君自身の判断で構わない。
だが、事実だ。
それに君達にとっても有利なものだ」

「………」

「見えざる敵と戦うよりは、見える敵を監視する方がいいだろ」
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