裏切りの少年
48. 依頼
―――ヘブン国内の山奥
時間は1100時
もうじき、お昼になるだろう。
俺は登山の格好をして、金本から教えてもらった場所に向かった。
通信機の電波もなく、コンパスと地図を頼りに目的地に向かう。


こんな所に人が住んでいるのか………
俺はそんなことを考えながら、前に進んだ。


「あれは………」


俺は遠くに家があるのを確認した。
俺は驚いた。まさか、本当に家があるなんて………
木に囲まれた小さな家だが、電気が付いている。


つまり、人が住んでいるのだろう。
俺は目的地を確認して、気持ちが楽になった。
金本との約束もそうだが、彼が望む『超越者』を作らなければ、次に進めない。
また、金本を探す旅をすれば、時間の無駄を費やすことになる。




―――家の玄関前
俺は玄関の前に立った。
家から物音がする。
やはり、誰か住んでいる。俺は身だしなみを整え、インターホンを鳴らした。
しばらくして、女性の声が聞こえた。


「は―――い」


玄関を開けた人は優しそうな女性だった。


「どちら様ですか」

「私、井上博士の知り合いで、柴田セイジと申します」


俺は金本に指示された通りに言った。
本名は語らない方がいい。
金本の話から考えて、今から会う人は『W』と関わりのある人だろう。
つまり、『W』に興味があり、本を書いていると言えば、ある程度の親しみ感を持ってもらうことができる。


「あら~、井上博士って誰ですか」


女性は答えた。
とぼけているのか、それとも本当に知らないのか。


「人間生物学の井上博士です。
『クローン技術』の………」


俺は女性に説明した。


「………よくわからないわ。
それだけですか」


女性は俺に聞いた。
俺は頷いた。


「そうですか。それでは………」


女性は扉を閉めた。


「はっ………」


俺は動揺した。
何か悪いことでも言ったか。
いや、俺は金本の話した通りに行動した。
俺には落ち度がなかった。
話が違うじゃないか………
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