裏切りの少年
俺はもう一度、インターホンを押した。
すると、先程の女性が現れた。


「なんですか………」


女性は迷惑そうな顔をしていた。


「私は仲介人として、井上博士の『超越者』研究を引き継いでもらおうと思い、ここまで来ました」


俺が言うと、女性は黙った。


「………もしかして、ユキヒロさんに用ですか」

「はい」


俺は誰だか分からないが、金本が話していた『彼』とは『ユキヒロ』のことだろう。


「そう………どうぞ、中へ」


女性はそう言うと、俺を家の中に入れた。


「ありがとうございます」


俺は家に入った。




―――家の中:リビング
家の中は綺麗だ。
隅々まで掃除されていた。
女性の後に付いて行くと、大きな広場に着いた。
たぶん、リビングだろう。
俺は辺りを見渡すと、男が一人、ソファーで毛布を被り、寝ていた。


「ユキヒロさん。起きてください。
お客さんです」


女性は男を軽く叩きながら、そう言った。


「ん~………朝か。
………おはよう。スズミさん」


男は眠たいのだろう。
頭を掻きながら、ソファーに座った。
男は50代だろう。
髭が伸び、髪はボサボサだ。
白衣を着ている。


「今日のご飯は何だぃ」

「外でサンドイッチです。
その前にお客さんが来てるわ」

「んっ………お客。
………ケンイチ君か」


男は辺りを見渡して、俺と目が合った。



「誰だ………君は」


男は少し嫌そうな顔をした。


「私は柴田セイジと申します。
貴方に仕事の依頼をしたく、訪問させて頂きました」


俺は深深とお辞儀した。


「仕事………何の………」

「井上博士が研究していた『超越者』を、先生にお願いしたいと思いまして………」

「めんどくさい」


男はそう言うと、ソファーから立ち上がり、リビングから離れた。


「先生………」


俺は男に話しかけたが、何も答えなかった。
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