裏切りの少年
仕方なく、俺は男が戻ってくるまで、その場に居た。
しばらくすると、スッキリした顔をして、男が戻ってきた。


「まぁ、ソファーに座って………
疲れるでしょ。
立っているの」

「それでは、お言葉に甘えて………」


俺はソファーに座った。
男もソファーに座り、俺と男は向かい合うように座った。


「それで、君は誰だぃ。
ケンイチ君の友人か」

「いいえ。
私は井上博士の知り合いです」

「井上博士か。
彼は元気にしているの」

「最近はお会いしていないので、わかりません」

「そう。
それで、あの人が研究していた『超越者』を私に作れと………」

「はい」

「どうして………」

「私は仲介人です。
申し訳ありませんが、依頼人のことは話せないです。規則ですので………」


俺は男に言った。


「ふ―――ん」


男は俺から、キッチンの方を見た。


「スズミさ~ん。
あと何分ほどで出来る」

「20分ほどかしら」


料理をしながら、スズミは答えた。


「そう」


男はあくびをしながら、俺の方へ顔を戻した。


「井上博士の研究してた『超越者』はどうなったの」


男はやる気なさそうに聞いてきた。


「失敗しました」


俺が答えると、男は笑い出した。


「何がおかしいんですか」


俺は不思議に思い、男に聞いた。


「いや~………すまないね。
彼、熱心に『超越者』研究してたから………
まさか失敗して、僕のところに仕事が来るとはね………」


男は笑い終わると、俺の方を見た。
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