裏切りの少年
しばらくすると、広川が部屋からPCを持って出て来た。


「ちょっと失礼します」


広川は俺の隣に座り、PCを俺の見えるように設置した。

PC画面には動画再生ソフトが起動している。


「Enterを押せば、動画が再生します」


俺は広川の指示通りにEnterをクリックした。

その画面には一人の男がこっちを見ている映像だ。

少し口が動いた瞬間、動画は停止した。

俺の心臓は激しく動いた。

俺の描いた『計画』が動き始めたからだ。

だが、その計画には『Infinite Information』の動画が必要だった。

そして、その動画の一部を手に入れた。

長年、欲しかった物を手に入れたのだ。

嬉しい限りだ。


「アイザワさん………」


俺は広川の声で感動に浸るのを止めた。


「ああ」

「まだソフトを完全に解析していないので、たった5秒の動画しか見ることができませんが、いずれは解析します」

「いつ頃までに解析できるんだ」

「5年後………早ければ」


広川は自身の無い声で答えた。


「そうか」


俺はそれ以上、追求しなかった。

この11年、何度も聞いたが、答えは『5年後』だ。

得体の知れないプログラムの解析のため、納期など分かるわけもない。

聞く理由は広川に圧力を掛けるためだ。

そうすることで、金を取るだけの会社にさせないようにしている。

俺は仕事の結果次第で解析資金に数%、料金を上乗せしている。

逆に、結果がなければ資金は支払わない。

そのため少しずつ結果を出してくれている。

また、この会社は情報漏洩をしていない。

会社にとっては当り前のことかもしれないが、それが信頼につながっている。

もし、情報漏洩をすれば、必ず『G』の標的になる。

今もH社が営業していることから、情報漏洩はないとされる。
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