裏切りの少年
護衛の警察官は事件から2日経つが、真面目に取り組んでいた。

それは敵がわからないことや再度の襲撃があるかが分からないためだ。

この緊迫感の中で生活を過ごすのは並の人間には厳しいことだ。

俺はそんな彼らの一人に話しかけた。


「この陣形は完璧なのか」


彼らは警察だ。

ある程度の訓練を行っているだろう。


「はい」


男は答えた。


「私の能力は『空間認識』です。
この場所に近づく人の位置をある程度感知しています」


「今現在、俺達以外にいるのは何人ほどだ」

「6人です」

「そうか。それは3次元で捉えられるのか」


狙撃犯が配置に付いているのなら、ビルの屋上に着くはずだ。

もし、感知できるなら敵の襲撃時間が分かる。


「いいえ。私は2次元的に捉えることしかできません」

「わかった。先生を頼む」


そういうと、俺は五十嵐の近くに寄った。

五十嵐は椅子に座っている。


「先生。少しお休みになっては」

「ふん―――………そうだな。もう少しここにいる」

「わかりました」


俺は五十嵐の横に付き、しばらくその場にいた。




―――1時間後
五十嵐は椅子に座りながら睡眠を取っていた。

俺も椅子に座り、襲撃を待っていた。

『G』隠密部隊は任務の失敗を許さない。

つまり、必ず次の襲撃はある。

その襲撃を担当するのは『G』議長隠密部隊のトップの奴だ。

俺も100年以上も前だがトップに君臨していたことがある。

そのため、来ることはわかるのだが、いつ来るのかはわからない。

議長の指示が早ければ、そろそろ来てもいいのだが………

俺は上着のポケットに手を入れた。隠し持ったナイフの感触を確認した。

そもそも、俺は警察の護衛を当てにしていない。

訓練をしていても、実戦でその能力を発揮できるとは思えないからだ。

『G』隠密部隊は戦闘のプロフェッショナルだ。

人を殺すことに何のためらいもない。

逆に警察は人を捕まえるだけの仕事だ。

決して人を殺めることはしない。

その差は歴然だ。
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