裏切りの少年
25. 利用
ジョーカーの連絡で目的の『ホーク』が来ていることを確認した。

だが、予想とは違った出会いだった。

隠密部隊は姿を隠して行動する。

だが、ジョーカーは堂々と姿を現した。

これまでの行動から五十嵐の暗殺のためなら、辺り一帯を燃え尽くすつもりだろう。




ジョーカーは右手に『炎』を灯した。

その『炎』を事務所に投げつけた。


「後衛部隊」


警察官のリーダーの指示で2人の護衛が事務所の壁となった。

『炎』は男達に当たる寸前で止まった。

『空間系』の『障壁』能力だろう。

止まった『炎』はやがて消えた。

彼らのおかげで事務所には火が付かなかった。


「ハーハハハ、いいね。
実にいい。久しぶりの仕事だ。
俺を楽しませろよ」


ジョーカーは再び『炎』を作り、事務所目掛けて放った。

今度の攻撃は火炎放射のような攻撃だ。

護衛は『障壁』で事務所を守っている。


「さっさと出てこいよ。五十嵐さんよ―――」


ジョーカーは右手を少し上に上げた。


「しまった」


リーダーはビルを見上げている。

彼の様子から『障壁』で防げなかった部分に火が付いたのだろう。

ジョーカーは『炎』を放つことを止めた。

奴は分かっているのだろう。

五十嵐がビルの外に出なければ焼け死ぬことを………

そして、出れば殺すことを………

警察の様子から、彼らは理解しているのだろう。

例え、全員でジョーカーに挑んだとして、勝てる見込みが少ないことを………

リーダーはジョーカーとビルを交互に見ている。

仲間に連絡が取れない状態で、この状況をどう回避するべきなのかを模索しているのだろう。
< 91 / 243 >

この作品をシェア

pagetop