裏切りの少年
俺は五十嵐に寄った。

リーダーはまだ五十嵐を説得している。

だが、首を縦に振る様子は無い。


「先生………いいや、五十嵐さん」


五十嵐は俺の方を見た。


「………君も彼に言ってくれ。
奴を倒せって………」


俺は五十嵐を眺めた。




この13年間、一緒に生活を共にしてきた。
五十嵐が俺を利用するように、俺も五十嵐を利用してきた。
無能者のための『能力開発』は素晴らしいものだ。
だが、それは理想にすぎない。
いくら言葉で伝えようとしても、世界はそれを認めない。
貴方には敵がいるのだ。
それは貴方の想像をはるかに超える組織だ。
組織の存在を知ったとして、貴方は戦えるのか。
答えは『NO』だ。
貴方ごときが命を掛けたところで、組織は揺らがない。




「五十嵐さん。今までありがとう」


俺は五十嵐に別れを言った。


「ヒサ………君………」


五十嵐は俺を呼びとめようとした。

だが、もう五十嵐には用がない。




俺が事務所の外に居るジョーカーの方へ向かった。


「その人を止めろ」


リーダーは部下に指示を出した。

護衛の奴らは俺の道を防いだ。

数は2人だ。

俺は両手を彼らの腹に向かって伸ばした。

護衛の2人は俺を抑えようとしている。

俺の手が彼らに触れた瞬間………

2人は外へと吹き飛んだ。

その光景を見て、護衛は一斉に俺の方へ銃を構えた。


「そこを動くな」


俺の後ろにいるリーダーが叫んだ。

俺はリーダーの指示に従わなかった。

事務所の入り口に着き、俺はリーダーに背中を向けたまま言った。


「五十嵐を頼む」


俺は事務所の外に出た。
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