裏切りの少年
俺の能力は身体の一部が標的に当たるときの勢いを増幅させる。

身体の一部とは手に持った物も認識される。

威力は半減するが、ナイフの刃部分で作った空気の斬撃を飛ばすことが出来る。

一種の『カマイタチ』のようなものだ。




俺は左手に能力を宿し、風を起こした。

風は炎の壁を消した。

『炎』が消えると、目の前には左手に通信機を持ち、右手で傷口を抑えるジョーカーの姿が現れた。


「ウルフ。その情報は本当に正しいのか」


ジョーカーは殺気を俺に向けながら、ウルフから情報を聞いたらしい。


「わかった。お前はそのまま待機だ。この糞野郎は俺が殺す」


通信機を仕舞った。

ジョーカーは粒子を両手に集めながら、話し始めた。


「お前は本当に『相澤ヒサノリ』か」


俺は答えなかった。

その代わり、ナイフを3度振った。

ジョーカーは鈍足ながらも走り、避けた。

先程の攻撃で『炎』で防ぐことは不可能だと知ったからだろう。


「高校卒業後、五十嵐の秘書となり、現在もその関係は変わらない」


ジョーカーは左手を俺に向け、火炎放射のように『炎』を放った。

俺は右に避けた。


「能力は『衝撃』能力。
だが、無能者だ」


ジョーカーは右手も使い、左手同様に能力を使った。

次第に左右の逃げ場所が無くなっていく。

俺は左右に動くのを止め、ジョーカーから距離を取った。

攻撃範囲はもう調査済みだ。

30m程離れると、ジョーカーの『炎』は届かなくなった。

ジョーカーは『炎』を放つのを止め、俺の方を見た。

「学校では戦闘のための能力訓練は行わない。
またお前は学校卒業後に特殊訓練を行った経歴はない。
だが、なんだ。
お前は………
明らかに戦闘訓練をしている。
それにお前は無能者ではない」
< 96 / 243 >

この作品をシェア

pagetop