チョコに想いを【完】
ー…
………
「罪作りなヤツよね、本当」
お昼が終わって、授業も終わって、家に着いたあたしは、早速キッチンに立ってエプロンを付けた。
雪の誕生日まで後一週間。
雪が望む美味しいケーキを作ってやろうじゃないの。
お昼は面倒臭そうなフリをしたけれど、
あんな風に食べたいって言われたら
頑張りたくもなる。
ー…それに、
「これだと気付かないよね、多分」
誕生日ケーキと言う名目のバレンタインチョコ。
チョコを渡したら気持ちに気付かれるかもしれないから、どうするのか悩んだ。
本当は気付いてほしいし、気持ちを伝えたい。
けれど、あたしの好きな人は、
あたしの大事な友達が好き。
今、あたしが気持ちを伝えても絶対に無理だって分かってるから、
だから、もう少しこのままでいたい。
フられる事からのただの逃げかもしれないけれど、
それでも、もう少しだけ。
「よーし!」
気持ちを伝える勇気がいつか出るようになるのを願いながら、
「まずは試作!」
取り敢えずは、
伝えられない想いを誕生日ケーキと言う名目の、
バレンタインチョコに。
おわり