彼の泣き虫事情
彼の泣き虫事情
「雪って、ええなあ」
まるで、吐息を零すような呟きだった。
授業中にも関わらず窓を開け放っていた。暖かい暖房を外へ逃がすその行為は、彼の隣の席の私としては、あまり有り難いものではなかった。冷たい刺すような風と雪が室内に潜り込む。
けれど、誰一人として、それを咎めようという者はいなかった。
彼の蜂蜜色の髪が、寒そうに揺れる。太陽が出ていれば、きっと綺麗に輝くのだろう。
彼が関西からこの東北へとやってきたのは、まだ雪深い春先だった。俺、黒沢陽太言います。よろしゅう!特徴的なイントネーションと、思わず目を細めたくなるような眩しい笑顔が、黒沢陽太という人物の第一印象だった。
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