彼の泣き虫事情


 必死に、私に何かを伝えようとしているのだと思った。

 怯えるように震える背中を優しくさすってやる。


「俺、あかんなあ。泣いて、ばっか、や…」


 それは、いつのことを言っているのだろうか。私は、陽太が泣いているところを見たのは初めてだった。

 心の中で毎日泣いているのか、毎晩夜、一人ベッドの上で泣いているのか、それとも私以外の誰かの前で泣いているのか。

 考えたって結論など出てこない。一つだけ分かることは、彼が今、自分自身のことをしっかりと理解していて、それに悲しんで泣いているということだった。


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