彼の泣き虫事情


 20分経っても、陽太が教室に戻ってくることはなかった。

 彼には衝動的な行動をとる癖があった(症状、と言った方が正しいのかもしれない)。

 さっきまで自分が何をしていたのか、何故その場に居たのか分からなくなった時などによく起こる。いきなり記憶が抜け落ちた分、空っぽになった頭は、新たに生まれた欲求に忠実になってしまうのだ。

 またか、と思う半面、妙に心がざわついた。校内を探し回ろうと席を立った時だった。


「あれ、あそこに居るの、黒沢くんじゃない?」


 クラスメートの一人が指した先は、先程陽太が開け放った窓の外だった。


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