月夜の物語
「姫。もう少し食べないと。立派な子の産めぬ体になりますよ」
「……もういりません」
「まったく‥。それでさえ、あんな体の弱い女の血を引いているというのに」
「……ごめんなさい」
そんな生活で、彼女は心を完全に閉ざしてしまった。
小言の絶えない乳母。ただただ溺愛の父。
彼女の社会はそれだけなのだ。
外が見たい。
人と話したい。
そんな彼女の淡い望みなど、誰ひとり、叶えてはくれなかった。
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