月夜の物語
「じゃあな、新」
「おー…」
「夜警頑張れよ」
「おー…」
日暮れ。
真っ暗な中、悠馬が身支度を終えて帰っていく。
その後ろ姿を新は恨めしそうに眺めていた。
「俺、暗いの苦手なんだよね…」
案外小心者である。
「灯り消えたらどーしよー…」
夜警中に一度火種が消えて、真っ暗闇で火種を探せずに焦ったことがあった。
もう二度とそんな思いをしたくないのだ。
彼はろうそくに火を灯し、重たい足を城内へ運んだ。