悔やみ嘆く思い
俺は野球部のみんなと別れて目的の場所に行くために駅に向かった。
切符を買って目的地までの時間をぼぉーと過ごした。こんなにゆっくり時間を過ごすのは久しぶりかもしれない。
一枚の紙を見ながら俺は目的地に向かった。
ピンポーン
玄関のチャイムを一回押す。
なぜか緊張して肩が無意識に上がってしまう。
「はーい」中から出てきたのは優しそうなおばあちゃん。紛れもなく実花のおばあちゃん。
「はじめまして。嶋谷翔太です。」
「翔太くん…?あなたが翔太くん…?」
おばあちゃんはもしかしたら俺のことを知っているのかもしれない。
「あらあらー。遠いところを。どうぞ、入りなさい」実花のおばあちゃんは俺をすんなりと家に通してくれた。
「お邪魔します」俺はおばあちゃんの後ろをちょこちょこ着いていった。
「今、お茶いれるわね」笑顔で微笑むおばあちゃんに頭を下げた。
しばらくしてリビングに帰ってきたおばあちゃん。
「どーぞ」ケーキと紅茶を出してくれたおばあちゃん。
「ありがとうございます」俺は口にカップを運んだ。
「どうして実花だったんだろーね」おばあちゃんの声が無性に俺の胸を苦しくする。
ポタポタと机の上に落ちる涙。
おばあちゃんの悔やみや苦しみが涙にすべて込められていた。
「あんなに優しい子だったのに。私が知らない実花が居たのかしらね。」
「それは違います。実花のおばあちゃんが思う実花はきっとそのままです。でも…俺には知らない実花が居ました。きっと誰もが分からない実花だと思います。」
俺は素直な気持ちをおばあちゃんにぶつけた。
実花のおばあちゃんはずっと俺の話を聞いてくれた。