君は僕の…僕は君の…
season9 崩壊の序調
コンコン…
はっ…
ノックの音で遥は
我に返った。
「遥ぁ…入るわよぉ」
お母さんだ…
いや、現実にはお母さんになってくれた人…だ…
「体調は大丈夫なの?…お粥、できたけど、食べる?」
心配そうに遥の顔を覗き込む。
遥はやり切れない思いだった。
「食べる気しないからいい。」
「そう……
じゃ、お腹すいたら降りて来てね。」
そう言って義母は部屋を出て行った。
遥は頭を押さえた。
涙が溢れ出す。
…こんなふうに言いたいんじゃないっ!
ここまで本当の子供のように育ててくれた、お母さん…お父さん…
私の辛い過去を思い出させないように、
嘘をついてくれた事は、とても感謝してる。
…それなのに、
なぜだろう…
この裏切られたような感情は…
すべてが嘘だった…
偽りだった…
あの思い出もっ…
どの思い出もっ…
あの写真達もっ…
よく考えれば、
みんなで写っている写真なんか、
一枚だってなかった…