君は僕の…僕は君の…
「…でも、小学校の時の思い出は全然覚えてないんだけどね…」
秋は伏せていた顔を上げた。
「私ね…小さい頃に、大きな事故にあってらしくてね…
…まぁその時の事もよく覚えてないんだけど。
あんまり両親も昔の話はしたがらないし……」
秋は何も言わず、
ただ黙り込んで聞いていた。
「…だから、
私の思い出は、トシ兄なの…」
「佐伯…先生?」
「そぉ。…私の穴が開いた思い出を一つ一つ…埋めていってくれる…
忘れちゃった私の記憶を、教えてくれる…
昔から私の事を知ってくれてるトシ兄だから出来る事なんだよね…」
愛おしそうに話す遥の事を、
秋は恐ろしいものでも見るかのように
遥を見ていた。