君は僕の…僕は君の…
「…君が悔しがる気持ちも、分かる…
里親が決まったんだろ…
…でも頼む!頼むから遥には、昔の事……思い出させないでやってくれ!
頼む!!」
なりふり構わないといった様子で、
敏也は、自分の生徒である秋に土下座をした。
そんな過剰ともいえる敏哉の態度に、
秋は一瞬、戸惑いを隠せなかった。
「そんなに遥を手放したくないの?
…彼女に嘘の記憶を植え付けてまで…」
「……」
「そんな事しても、
遥は渡さないよ…
それに、
遥は昔の記憶を少しずつ、思い出してきてる。」
「えっっ?!」
床につきそうなくらい下げていた頭を、
敏哉は勢い良くあげた。
「…なんだって?」
「僕といると、頭が痛くなるらしい。
それと同時に記憶が蘇っているようだった。」
敏哉は信じらんないといった表情で秋を見上げる。
「それを証拠に、
遥は昨日、
昔の呼び方で僕の名前を呼んだんだ。」