バレンタイン事件簿
「今年はね、里緒ちゃんが手作りの方が喜ばれるって言うから……ちょっと頑張って手作りに挑戦してみたの!!」

気付けば男2人小刻みに震えているではないか。2人は知っていた。

佐和の料理の腕前はかなりと言って良いほど、ひどい事を。

それを知らずに初めて食べた彼女の料理に、2人は数日間寝込んだほどだ。


「なあ、佐和。もう料理はするなって言わなかったっけ?」

「ユズ、ワタシが何年も変わらず料理が下手だと思って!?」

「佐和ちゃんそんな事ないって! な、柚太」

「本当!? じゃあ、今食べてみて?」


柚太の言葉にムッとした佐和をなだめるつもりが、郁人は逆に自身を苦しめる結果を招いてしまった。

満面の笑みを浮かべる佐和の前で断る事も出来ず、郁人は恐る恐る中身を見る。

巻き添えを食らった柚太も郁人と同様の行動を取った。
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