バレンタイン事件簿
覚悟を決めてドアに手をかけたその時だ。


「えーっと、中に入らないの?」

「!?」


少し遅れて奏がやって来たのであった。

咲の心音は一気に高まり、思考がパニックに陥ったのか言葉を口にする事が出来なくなってしまう。

そんなバタつく咲に、奏はクスリと笑う。


「入ろうか」


強引に咲の手を引き、爽やかな笑みはそのままに生徒会室へ。

何が起こったのかが咲には理解が出来ず、このまま失神をしてしまいそうであった。

その瞬間の記憶が果たしてにあったのかどうかは定かではない。

いつも賑やかな生徒会室は、2人きりだからなのかやたらと静かに感じ、

まるで別の空間にでもいるような錯覚さえ覚えるほどだ。

ようやく我に返る事の出来た咲は、手早く用を済ませようと青い包みに入ったチョコを奏に何も言わずに差し出した。
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