Love syndrome〜溺れるように惹かれていくんだ〜
目の錯覚かもしれない。
でも、確かにそう感じてしまった。
…私以外、静香だって先輩方だって上司だって、誰も気づいていなそうなこの雰囲気の中、私はなにも言えなかった。
けど、確かに違和感を感じたんだ。
「…ほ、詩穂!高野部長が呼んでるよ?」
私がぼんやりしていると、静香が私の腕をつつきながら焦ったようにそう言う。
私は我に返り、急いで課長の席に向かったのだった。
―――そのあとも、高野課長はぼんやりしていた私を怒るようなそぶりも見せずに仕事のやり方や指示を出す。
だから、私はすっかり忘れてしまったんだ。
…高野課長の違和感を。