桜りっぷ
扉の向こう・・・

明るい部屋・・・

『おかえり、カイリ
 ごはん、食べるでしょう?』

しーん

暗い部屋・・・

お前の姿は、どこにも無い。

こうして、酒に酔うのは
この現実を見たくないから
かもしれない。

「気分わりぃ
 
 吐きそう・・・」

慌てて便所に向かった、俺は
空っぽの腹に、入るだけ
飲み込んだ酒を吐き出し
洗面所で顔を洗う。

流れる水・・・

冷たい・・・

タオル、タオル・・・

精一杯、手を伸ばしても
そこには何も無い。

あるのは、洗濯の山。

この三ヶ月間、藍に身の回り
の事を全て任せっきりだった
俺は、何にもできない男に
なっていた。
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