いつかたどりついたら
この学校の暗室は
デザイン科の写真実習でも使うので、
引き伸ばし機が十台もあって、
設備は充実していた。

まだ、他の部員も来ていない。
部長も撮影に行っているのだろう。

現像用のバットに、
現像液と停止液を注ぐ。
酢酸の、つんとした臭いがする。

印画紙乾燥機のスイッチを入れていたら、
突然ドアが開いた。

「矢沢先輩」

よう、とか言いながら、
矢沢先輩がドアの所に立っている。

「暗室を開ける時は
必ずノックして下さい。
光に当たると
印画紙がダメになってしまうので」

「ああ、そういうもんなの? ごめん」

先輩は
思ったよりずっと素直に
あやまりながらドアを閉めた。
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