いつかたどりついたら
「何かご用でしょうか」

「へー、暗室ってほんとに真っ暗じゃん」

矢沢先輩と
暗い部屋に二人きりでいる。
何故かそれほど、緊張はしなかった。
彼の人懐っこいしゃべり方の
せいかも知れない。
赤いセーフランプが先輩の顔を照らす。

「何かご用……」
「千里に会いに来たに決まってるだろ」

私に気を使ってくれているのか、
部屋の真ん中にある流し台より
こっちに来ようとはしなかった。
少し離れた所から、
私を見てにやにやしている。

「状況不利だからさ、
ポイントを稼いでおかないと」

矢沢先輩は、
やっぱり私の事を諦めていないんだ。
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