いつかたどりついたら
「好きな人、とやらに
いつ先を越されるか分かんねえし」

春樹のことだ。
もう、そんなこと有り得ないのに。

「……どうかした?」

涙がこぼれそうになった。
先輩の優しさに、
心が折れそうになる。

「振られました」

「え?」

「好きな人、とやらには、今朝振られました」

矢沢先輩の目がちょっと大きくなる。
私に背を向けて、
両手で小さくガッツポーズを取る。
表情は見えないけど、
多分、笑っている。

「あ、ごめん……」

にやけた表情を
無理やり真面目な顔にしながら、
彼は私の方に向き直る。

「だけどさ、悪いけど正直嬉しくて」
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