いつかたどりついたら
先輩が
流し台に添ってゆっくり歩きながら
私の方に近づいて来る。

「もう、断る口実は無いだろ」

引き伸ばし機一台分。
矢沢先輩は今、
すごく近くにいる。
緊張で両腕がピリピリする。

ああ、でも
私は
この人のことを
嫌いじゃない。

むしろ、
好感を持ち始めている。

「俺と、付き合ってよ」

この人なら、
好きになれるかも知れない。

春樹への気持ちを
忘れられるかも知れない。

春樹とは、
ただのいとこ同士に戻るんだ。
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