いつかたどりついたら
電車の先頭車両に
二人で並んで座る。
私たちの他に、乗客が数人いるだけだ。

「春樹は何か言ってた?」

「……矢沢とか言う人と付き合うんだって?」

優にいちゃんは、
さっきからずっと、
困ったような顔で笑っている。

「うん」

私の返事を聞いた優にいちゃんは、
もっと困った表情になって
しばらく何かを考えていた。

「よく知らない人の事を
悪く言いたくは無いけど」

言葉を選ぶように、
優にいちゃんが話し出す。

「その矢沢って人、良くない評判を聞くよ。
デザイン科まで噂が届いてる」

それ以上は何も言わなかった。
どんな噂なのかも教えてくれなかった。
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