いつかたどりついたら
春樹が、乾いたネガフィルムを
六枚づつに切り離して、
六つ切りサイズの印画紙に並べていく。

「じゃあ、ベタ焼きまでは自分でやるから」

引き伸ばし機のタイマーをセットして、
カチリ、とスイッチを入れる。
印画紙が光に照らされる。

「俺じゃ、上手く焼けないんだ」

と、春樹は言いながら、
感光した印画紙を現像バットに入れる。
現像液の中でゆらゆらと、
春樹の撮ったいくつもの空が浮かんでくる。

ネガフィルムをそのまま並べて、
一覧にしたベタ焼き。
それぞれに写る小さな空。

「これ、この写真がいい」

春樹が指差したのは、
今朝の円盤雲の写真だった。
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