いつかたどりついたら
背中に矢沢先輩の視線を感じる。
首筋がじりじりするような、
くすぐったいような、変な感じがする。

感光した印画紙を、
現像液の入ったバットに浸していると、
背中からふわりと
矢沢先輩に抱きしめられた。

「先輩?」

「ごめん、邪魔しないつもりだったんだけど、
つい……」

心臓が痛いくらいにドキドキしている。
それなのに先輩は、
私をからかうように笑っている。

「好きだよ、千里」

耳元で、小さな声でささやかれる。
頭に血がのぼる。顔が熱い。
耳に、体中の血液が行ってしまう気がする。

「わ、私も……」

耐えられなくなって、
矢沢先輩の腕からすり抜ける。

ひとつ、小さな深呼吸をして、
矢沢先輩の方に向き直る。

「私も、矢沢先輩のことが好きです」

さっきまで笑顔だった先輩が、
呆然とした表情になる。
言い方を間違えたかな、と思い、
もう一度言い直す。

「私は、矢沢先輩のことが好きです」
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