いつかたどりついたら
やっと言えた。
ずっと言えなかった言葉。

矢沢先輩がしゃがみ込んでしまう。
ヤンキー座りをして、
両腕に顔をうずめている。

「笑ってるんですか?
本気で言ったんですけど」

「うん、笑ってる」

矢沢先輩が小さく言う。
その声は笑っていないようだった。

「顔、見せて下さい」

私も先輩の前にしゃがみ込んで、
先輩の顔を覗き込む。

座ったまま、先輩に抱きしめられる。
一瞬見えた横顔は、
笑っているようにも
泣いているようにも見えた。

矢沢先輩が大きくため息をつく。
そして、

「ありがとう」

とだけ言った。
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