いつかたどりついたら
コンコン、
とドアをノックする音がする。

慌ててお互いの身を離し、
飛びのくように立ち上がる。

カメラを首からぶら下げた
春樹が

「ただいまー」

と言いながら、暗室に入ってきた。

「お、おかえり。
撮影はもう終わったの?」

「終わったけど……」

春樹が私と矢沢先輩を見比べる。
先輩は、背中を向けて
引き伸ばし機を見ている。

「暗室でいちゃいちゃしないで下さーい」

春樹が冗談っぽく言う。
顔には薄ら笑いを浮かべている。

「うるせえよ。一年」

矢沢先輩は、春樹の頭を軽く叩いて、
暗室の外に出て行った。
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