いつかたどりついたら
八千代が黒い漆塗りの重箱を開くと、
そこには
つぶあんと
きなこと
黒ゴマの
おいしそうなおはぎが
三つずつ並んでいた。

「おはぎを作ったの?」

「作るともさ、おはぎくらい」

中学校の頃、
クッキーを焼いてきたりするのが
クラスで流行したけれど、
おはぎを作ってくる女子高校生は
あんまりいないんじゃないかと思う。

本当に八千代は変わっている。
そしていつも
謎の自信に満ちている。

「おいしい!」

八千代の作ったおはぎは
本当においしかった。
あんこの甘さがひかえめで
お店で買うのよりずっとおいしい。

「そうだろう、元気が出るだろう、
たんとお食べ」

何のモノマネなのかもよく分からない、
時代劇みたいな
八千代のセリフを聞いていたら、
なんだか可笑しくなって
つい、笑いながら涙が出てきた。
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