いつかたどりついたら
「だ、駄目です!
暴走族なんて危ないです!」

付き合って半月以上たつのに、
矢沢先輩が暴走族に入っているなんて
知らなかった。

「そろそろ引退したいんだけどさ。
俺がいないと若い奴らが無茶するしなあ。
ケツ持ちだし、出ないわけにもいかない」

「ケツ持ち?」

「最後尾でパトカーを食い止める役」

知らない世界の話が広がっていく。
パトカーを食い止めるなんて、
想像もつかない。

「それ、すごく危ないんじゃないですか?」

「危ないねえ」

他人事のように
矢沢先輩が笑う。

「そんなの駄目です!
怪我したりするんでしょ?
警察に捕まるかも知れないんでしょ?」

「お袋みてえ」

本気で心配しているのに、
矢沢先輩はずっと楽しそうに笑っている。

「そこまで反対されたのは初めてだな。
そんなに心配してくれるなら、
本気で引退を考えてみるよ。
でも、明日は出ないわけにはいかないから」

ハンカチを持った私の手を、
矢沢先輩がそっと握る。

「大丈夫だよ。
月曜日、暗室に会いに行くから」

自信に満ちた矢沢先輩の笑顔。
だけど、私は不安でしょうがなかった。
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