いつかたどりついたら
優にいちゃんがいたずらっぽく笑う。
彼は私たちよりずっと大人で、
いつも私たちのことを守ってくれていて、

「初めて嫉妬という感情を知ったのは
六歳の時だったかなあ」

私たちは甘えすぎていたのかも知れない。

「俺が六歳で、
春樹と千里ちゃんは五歳だった。
このリビングだったよ。すごくいいお天気で、
叔母さんが洗濯したカーテンを取り込んで」

優にいちゃんが、
カーテンを見ながら話し出す。

「千里ちゃんがレースのカーテンを被って
『お嫁さん』って言ったんだ。
レース越しの千里ちゃんはかわいかったな」

全然覚えていなかったし、
初めて聞く話だった。

「春樹が花婿の役をやるって言うから、
しょうがなく俺が牧師をやって、
適当に『神に誓ってください』
とか言ってたら、
レースのカーテンの隙間から、
春樹が千里ちゃんにキスしたんだ」

「嘘!」

「ほんと。全然覚えてない?
あの時は本気で
春樹のこと殴ろうかと思った。
まあ、我慢したけど」
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