いつかたどりついたら
矢沢先輩が入院しているのは、
学校から二駅離れた所にある病院だった。

矢沢先輩の担任は

「おー、矢沢の彼女だ。お前、有名人だぞ。
よくあんなのと付き合う気になったなあ」

と失礼なことを言いながらも、
丁寧に病院への地図を描いてくれた。


メモを見ながら病室の入口まで来る。
腕にギプスをした男の人が一人、
病室のベッドの上に座っていた。

四人部屋の病室。
矢沢先輩はいないのかな、
と思って部屋を覗いていると、

「千里?」

とギプスの人に声をかけられた。

「……? ああっ、矢沢先輩!!」

一瞬、本気で誰だか分からなかった。

「髪型が……」

「ああ、両手が使えなくてセットもできねえ。
変だろ」

いつもはオールバックにしている前髪が、
顔にかかって鼻のあたりまである。
少しだけ斜めに分けている。

「か、かっこいいです。
トレンディードラマの人みたい」

動揺して訳の分からないことを言ってしまう。

「眼鏡の度が合ってないんじゃない?
まあ座れば」

先輩が笑いながら、
椅子をすすめてくれる。
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