いつかたどりついたら
「国道でさ、仲間を逃がして、
パトカーを振り切った後、
わき道に逃げたんだ。
狭くてなんにもない道。
後ろが静かになって、ほっとして前を見たら、
一面に太い鎖が張られてるんだよ。
慌てて避けようとして転倒した」

先輩は少しだけ笑って

「後から見たら鎖なんてどこにも無いのな。
いやあ、メットかぶって無かったら死んでた」

と言った。

病室の少し開いた窓から、
風の入ってくる音が聞こえる。

「私……」

先輩はシーツを見つめたままだ。

「私、高校に入るまで、
身内以外の人間と
あまり関わった事が無くて」

手の中のプリンが
ぬるくなってきている。

「自分の言動や行動が
人を傷つけることがあるなんて、
想像したこともありませんでした。
ましてや、誰かを好きになることで
傷つけるなんて」

「うん……」

「このままじゃ矢沢先輩のことを傷つけます」
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