いつかたどりついたら
「告白した日の前日だったかな。
千里、普通科棟の近くで
写真を撮ってただろ」

覚えてる。

「カメラを構えて、空を見上げてさ。
雲の写真でも撮るつもりなのか、
ファインダーを覗いて」

その日、
私は空を撮ろうとしていた。

「その横顔が、すげー綺麗だった。
この子になら本気になれるんじゃないかって
その時思ったんだ」

その時、
私は春樹のことを考えていた。
春樹の撮る写真が大好きで、
春樹のことが大好きで、

矢沢先輩は、
“春樹のことが好きな私”を
好きになったんだ。

廊下を看護婦さんが通っていく。

「先輩、私……」

院内は誰もいないみたいに静かだった。
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