いつかたどりついたら
初めて美術室に入る。
油絵の具の匂いがする。
天草先輩の他に誰もいない。

いくつかの小さい油絵に混ざって、
50号の大きなキャンバスが
壁に立てかけてあった。

春樹がキャンバスを見て、
慌てて目をそらす。
ちらっと天草先輩の顔を見て、
また、その絵の方を見る。

一メートルくらいある
そのキャンバスには
天草先輩の自画像が
等身大で描かれていた。

正面を向いて、
両膝をついて、
目を閉じて、
両手を前に差し出して、

服を身につけていない、
フルヌードの自画像。

「すごい……。綺麗です」

思わず息を飲む。
燃えるような赤い背景。
ピンク色の肌。
天草先輩の絵は
圧倒的な迫力だった。
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