いつかたどりついたら
ベランダの下に
ギャラリーが集まってくる。

「天草だ」

とか、

「髪切ってるぞ」

なんていう声が
小さく聞こえる。

二階のベランダを見上げる生徒たちに、
天草先輩は
ハサミを突きつけるポーズをとる。

その姿はとてもかっこよくて、

「天草先輩は自分のことが好きですか?」

つい、聞いてみる。

彼女は当然のように

「好きだよ。
千里は自分のこと嫌いだろ」

と、言った。

シャキシャキシャキと
リズム良く髪を切っていく音がする。
頭が軽くなってくる。

「……嫌いです」

「だと思った」

春樹はフィルムが無くなったみたいで、
もどかしそうに
巻き上げレバーを回している。
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