いつかたどりついたら
いつかは
天草先輩みたいに
自分のことが好きになれるのだろうか。

そんな心境に
たどりつくことができるのかな。

いつの間にか
校舎の下には
たくさんの生徒が集まって、
中には先生までいて。

春樹は写真を撮り続けていて。

今この瞬間だけ
自分が主人公になったみたいな
くすぐったい感じがした。

「千里ちゃん!?
天草、何やってんの?」

カバンを取りに来たのか、
優にいちゃんが戻ってきた。

「ちょうど終わったとこー」

天草先輩が、
私を立たせてエプロンを取り、
ベランダの手すりに押し付ける。
下からいくつかの拍手が起こって、
先輩はカーテンコールみたいに
みんなにおじぎをしている。

「どう? 優一」

天草先輩に
くるりと部屋の方を向かされる。

「う、うん……。かわいい」

どんな髪型になっているか
想像もつかないけれど、
優にいちゃんの表情を見ると
うまくいったみたいだ。
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