Contrast
 図書室への道は、特に問題は無く、気が付いたら図書室の扉の前に立っていた。


 ゆっくりと深呼吸をしてみる。予想通り吐く息が震える。臆病者の私は初めて入る場所が苦手だ。扉の引き戸に当てた手に力を入れ、勢いよく開けた。


 その瞬間、何かに引き込まれた気がした。その違う世界に招かれたような感覚は、私の固い気持ちを少しだけほぐしてくれた。


 ここは本当に図書室なのだろうか。そう疑ってしまうほどこの部屋の雰囲気は異質だった。


 高い本棚に分厚い背表紙の本がぎっしりと納められていて、小中学校で見かけた児童書なんかは全く置いてないようだ。


 ちらりと横を見ると、司書さんだろうか。カウンターに伏せて眠る中年のおばさんが視界に入った。あんなに勢いよく音を立てて扉を開けたのにも関わらず、熟睡中だ。


 私はちょっぴり呆れてしまった。こんなものでいいのだろうか、と。
< 3 / 7 >

この作品をシェア

pagetop