結局、きっと…好き。
やっとのことで登りきった石段の上に立って海を眺めたけど……。
「真っ暗で何も見えない…」
「そりゃ夜だからなぁ…」
そう…。
せっかくの『初・夜海』なのに…真っ暗で何も見えなかった。
「波の音しか聞こえてこない…」
がっかりだよ…と肩を落とせば。
「それが良いんじゃねぇか」
店長はそう言って隣に座った。
「そうなの?せっかく来たんだから海が見たかったな〜」
座った店長の隣に私も座って波の音に耳を傾けた。
ザザン…−−−−−。
ザザン…−−−−−。
絶え間無く波が寄せては返し、寄せては返し…。
「ねぇ、店長…」
「…何だ?」
「波の音って…眠たくなるね…」
ありのままを伝えたらおでこを叩かれた。