キスしたくなる唇に。


「キス、してほしいです」



あたしの口は、いつも単独行動をする。



だけどこれがあたしの素直な気持ちで、考えで、結果的に言えば思考で。

きっと、『愛してる』とか『好き』なんて言葉は、口が勝手に言ってくれるんだろうなあ、なんてどうでもいいことを思った。




しばらく沈黙を置いて、夢の中の先輩は易しく口を開いた。





「いいよ」


思わず目を開きたくなった。
だけど、
ダメ。

これは夢だから。夢の中だけでも。

だめだ。思考も単独行動。




あたしは意地でも目を開いてしまわないよう、ぐっと瞼に力を入れた。

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