43歳の産声
異変に気づいたのはそのすぐ後だった。
私は今生まれたばかりなのに、目の前にいるのは冴えない中年の産婦人科医であることを確実に認識しているし、周りの風景はこの目に鮮明に映し出されている。
その証拠に今テレビでやっているのはインサイダー取引のニュースであることが、生まれたばかりの私がわかってしまっている。
さっぱり状況がわからない。
この状況を理解しようとしてる時点で私は新生児としておかしいのだ。
「お母さん。立派な男ですよ。」
男?普通は男の子でしょう。
言い間違えたのだろうか。だが産婦人科医は言い直そうとしない。
産婦人科医は心なしか笑顔がひきつっていた。